相続専門の税理士が、相続の現場、税理士の仕事、AIと働くこと、暮らしのなかの税について書いています。
はじめに読むなら、この三本
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AI研修の夜に
税理士会のAI研修に行ってきました。私は研修部員なので、その日は会務で受付をしていました。研修が始まる前、研修部の皆さんと受付に座っていました。少し暇だったので、右隣の先生に、最近、紙を束ねる道具と、それを外す道具に凝っている、という話を... -
税理士ちまちま日記
最近、『税務署員うつうつ日記』という本が出たと知りました。あのシリーズには、「ヨレヨレ」「ぐだぐだ」「おどおど」「ばたばた」「うつうつ」みたいな、ちょっと情けなくて、でも妙にその職業らしい四文字がついています。では、もし税理士編があった... -
税理士界
芸能界。財界。政界。税理士界。あれ。最後の一つ、知らないですよね。でも、あります。私たち税理士のところには、その名も『税理士界』という新聞が届きます。日本税理士会連合会が発行している、税理士のための新聞です。私は税理士になるまで、「税理... -
教養の意味が、申告書ファイルを見ていてわかった
私は大学の教養学部で、文化人類学を専攻しました。所属していたのは、超域文化科学というところです。「超域」という、少し変わった名前がついていました。文化人類学を中心に学びながら、ほかの分野の授業も自由に取ることができました。教養学部には、...
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1月1日に亡くなるということ
以前、1月1日に亡くなった方の相続税申告を、お手伝いさせていただいたことがあります。 相続の仕事をしていると、亡くなった方がその年に払うはずだった税金も確認します。 そのとき、不思議なことがありました。 住民税は、かかりませんでした。 でも、... -
亡くなったあとにも、住民税はかかる
相続の仕事をしていると、ときどき、ご家族からこんなことを聞かれます。 「もう亡くなっているのに、住民税を払うんですか?」 とくに年の前半に亡くなった方の場合、亡くなったときにはまだ、その年度の住民税の納税通知書が届いていないことがあります... -
タックス・タクちゃんの恋人は、なぜのうぜい・ノンちゃんなのか
この前、「簡易な接触」という言葉について記事を書きました。 「簡易な接触」にはいくつかの方法がありますが、私にいちばん馴染みがあるのが、「相続税の申告等についての御案内」です。 相続税の仕事をしていると、お客様のところにこの紙が届くことが... -
外書きされる人たち
相続税を専門にしているので、国税庁が毎年公表する「相続税の申告事績」は、毎年気にして見ています。 令和6年分の資料を開くと、最初のページに大きな表があります。 課税割合は10.4%。相続税額のある申告書の提出に係る被相続人数は、16万6,730人です... -
税務署が、ちょんとタッチする
相続税について、「簡易な接触」が増えている、という記事を読みました。 令和6事務年度の件数は2万件を超え、前事務年度より17%増えたそうです。 「簡易な接触」という言葉自体は、前から知っていました。 その記事には、会計事務所としてはこれを軽く扱... -
税務署は知っている
ある日、税務署から郵便物が届きました。 亡くなった父の相続について、と書いてあります。 相続税の申告が必要ではありませんか。 そんな内容でした。 家族は、少し気味が悪くなりました。 どうして税務署が、父が亡くなったことを知っているのでしょう。... -
口座凍結スイッチ
夫が亡くなった。 妻は市役所へ行き、死亡届を出した。 窓口の職員は書類を受け取ると、内容を確認した。 「はい。確かに受理しました」 妻が去ったあと、職員は机の下に手を伸ばした。 そこには、小さな赤いスイッチがある。 カチッ。 信号は、市役所から... -
怖い仕事
税額を間違えること。大事な財産を見落とすこと。申告期限に間に合わないこと。 相続専門の税理士をしていると、こういうことはいつも気になります。 けれど以前、AIから、私の仕事について別のことを言われました。 「まゆさんの仕事は、怖い仕事だと思い... -
死亡日にも、朝があり、昼があり、夜がある
相続のご相談を受けると、私はまず、亡くなった日をお尋ねします。 ご家族を亡くして間もない方から、お問い合わせをいただいたときのことです。 「昨日です」 そう答えたあと、少し間を置いて、その方は言い直しました。 「あ、違いました。一昨日です」 ... -
温泉卵ができる前に
昨日は、敬老の日だった。 台風で雨が降っていた空は、一日たつと真っ青に晴れていた。日差しはじりじりと強く、自転車をこいでいると少し汗ばむ。往来には人がたくさん出ていた。 そんな中を事務所へ向かっていると、ふと思った。 遺言書を書こう。 昨日...
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税理士になってよかった
さっき、「トイレ構文」という記事を書きました。 税務署から届く御案内の文章が、公共トイレの貼り紙に似ているというところから始まった記事です。 書いているうちに、「申告漏れ」と「尿漏れ」が似ていることに気づきました。 おや、どちらも漏れる。 ... -
トイレ構文
相続税の仕事をしていると、お客様のところに「相続税の申告等についての御案内」という紙が届くことがあります。 この御案内には、冒頭にこんな一文があります。 税務行政につきましては、日頃から御協力をいただきありがとうございます。 それを読んだと... -
税理士事務所の小さな怪談
私の税理士事務所は、小さなワンルームマンションの一室にあります。 玄関の靴箱の上には、三つのものを置いています。金継ぎの器と、白いアロマストーンと、キャンドルポットです。 相続のご相談にいらした方は、事務所に入ってくるときには、たいてい何... -
手書き風と手書きは違う
以前、領収書をやめたら、なぜかペン習字を習うようになった、という記事を書きました。 その後も、二週間に一度、ペン習字に通っています。 先日、仕事で使っているお礼状の文章を、先生にお手本にしてもらうことにしました。 書きたいのは、こんな文章で... -
口座凍結スイッチ
夫が亡くなった。 妻は市役所へ行き、死亡届を出した。 窓口の職員は書類を受け取ると、内容を確認した。 「はい。確かに受理しました」 妻が去ったあと、職員は机の下に手を伸ばした。 そこには、小さな赤いスイッチがある。 カチッ。 信号は、市役所から... -
領収書をやめたら、ペン習字を習うことになった
請求書を受け取ると、ときどき、こんな一文を見かけます。「金融機関の振込金受取書を、領収証に代えさせていただきます。」こういう運用をしているところは、けっこうあります。銀行振込なら、振込明細や通帳に記録が残ります。請求書とあわせれば、誰に... -
今日もちまちまと。
先日、AIと、ある介護給付の話をしていました。金額は7万円ほど。するとAIが、「それが死亡前のものか、死亡後のものか、確認したほうがいいですね」と言いました。「あなた、常識ないね」私は思わず、音声入力でそう言って、そのまま送信しました。亡くな... -
税理士そろばんぱちぱち日記
相続の初回面談では、相続人の方から、いろいろなお話をうかがいます。財産のことだけではありません。亡くなった方がどんな方だったのか。ご家族がどんなふうに暮らしてきたのか。メモばかり見ていたくないので、AIボイスレコーダーを買うことにしました... -
ぴかぴか、ぺらぺら
税理士向けの業務用品カタログというものがあります。そこには、相続税申告書を綴じるための専用ファイルも載っています。黒い皮革風の表紙に、金文字。希望すれば、被相続人や相続人の名前を金箔で入れることもできます。最高級品は、一冊8,200円から。商... -
ホッチポンと、はりトルPRO
ホッチキスには、たいていお尻のところに、針を外すための爪がついています。たいていの人は、それで十分なのだと思います。私も、昔はそうでした。監査法人に入ったとき、新人に一つずつホッチキスが配られました。MAXのものでした。同期の子が、「MAXは...
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うんこ税理士
税理士会の定期総会は長い。 私は退屈していた。 スマホで租税教育について調べていたら、「うんこ×税」という文字が目に入った。 えっ、と思った。 調べてみると、うんこドリルと財務省のコラボレーションだった。 なんで、うんこ。 税理士の世界には、に... -
税理士になる門前で、二千円につまずく
かれこれ十年近く前、税理士登録をしたときのことです。税理士登録には、思っていた以上にたくさんの書類が必要でした。当時の私は、公認会計士有資格者として税理士登録をしようとしていました。会計士試験の合格証書、実務補習の修了証書、履歴書、誓約... -
北大路欣也の目
税理士会の研修に行くと、だいたい税理士がいます。当たり前です。ところがその日は、受付のあたりに、いつもとは少し違う人たちが混じっていました。髪型が違います。服装も違います。なぜか、体つきまで違って見えます。会計ソフトをつくるIT企業の人た... -
AI研修の夜に
税理士会のAI研修に行ってきました。私は研修部員なので、その日は会務で受付をしていました。研修が始まる前、研修部の皆さんと受付に座っていました。少し暇だったので、右隣の先生に、最近、紙を束ねる道具と、それを外す道具に凝っている、という話を... -
税理士界
芸能界。財界。政界。税理士界。あれ。最後の一つ、知らないですよね。でも、あります。私たち税理士のところには、その名も『税理士界』という新聞が届きます。日本税理士会連合会が発行している、税理士のための新聞です。私は税理士になるまで、「税理...
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ひとごとを尽くして
朝から、メールボックスを開いている。 今日は、半年前から準備してきたことの、結果が出る日だ。 うまく次へ進むことになれば、連絡が来る。そうでなければ、何も来ない。 連絡が来るとしても、今日とはかぎらない。 それは分かっている。 机の上には、お... -
間違う力
AIについての文章を読んでいると、ときどき、整った答えを出すAIと、間違ったり寄り道したりする人間を対比する話に出会います。人間は不完全だからこそ面白い。間違うからこそ、予定になかった場所へ行ける。そういう見方もあるのだと思います。ただ、私... -
念のため
少し前、「手持ち無沙汰」という記事を書きました。AIが仕事をしているあいだ、ついYahoo!ニュースを開き、ヤフコメまで読んでしまう、という話です。念のため申し添えておきますが、いつもヤフコメを読んでいるわけではありません。だって、税理士ですか... -
手持ち無沙汰
最近、AIに仕事を手伝ってもらっています。AIに指示を出すと、そのあいだ私の手は空きます。待ち時間はそれほど長くありません。外へ出るほどでも、別の仕事を始めるほどでもない、中途半端な時間です。それで、ついYahoo!ニュースを開いて、何か面白い記... -
ハルシネーション
以下は、実際の原稿、会話ログ、複数のAIによる講評をもとに構成した法廷劇です。――法廷記者A9月3日、自分で書いた記事を読み返していた税理士Mが、一文の前で止まった。相談者は、椅子の足につかまりながら、床にしゃがみ込みました。Mには、そんなところ...
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税理士になってよかった
さっき、「トイレ構文」という記事を書きました。 税務署から届く御案内の文章が、公共トイレの貼り紙に似ているというところから始まった記事です。 書いているうちに、「申告漏れ」と「尿漏れ」が似ていることに気づきました。 おや、どちらも漏れる。 ... -
ピッピに憧れて
子どものころ、『長くつ下のピッピ』が好きでした。 ピッピは、大人の決めたルールにあまり頓着せず、自分のやり方で生きています。 とんでもなく力が強くて、物おじもしない、「世界一強い女の子」。 子どもの私には、そんな自由さがものすごく魅力的に見... -
教養の意味が、申告書ファイルを見ていてわかった
私は大学の教養学部で、文化人類学を専攻しました。所属していたのは、超域文化科学というところです。「超域」という、少し変わった名前がついていました。文化人類学を中心に学びながら、ほかの分野の授業も自由に取ることができました。教養学部には、...