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領収書をやめたら、ペン習字を習うことになった

請求書を受け取ると、ときどき、こんな一文を見かけます。

「金融機関の振込金受取書を、領収証に代えさせていただきます。」

こういう運用をしているところは、けっこうあります。

銀行振込なら、振込明細や通帳に記録が残ります。請求書とあわせれば、誰に、いくら支払ったかも確認できます。

それを何度も見ているうちに、あるとき思いました。

これ、私もやればいいのでは。

それまで私は、報酬を振り込んでいただくと、領収書を作って郵送していました。

印刷して、封筒に入れて、宛名を書いて、切手を貼って、ポストへ持っていく。

地味に手間がかかります。

領収書が必要な方には発行するとして、必要でもない方にまで毎回こちらから送らなくてもよさそうです。

そこで、領収書は原則として発行せず、必要な場合にはご連絡いただくことにしました。

よし。またひとつ減らした。

入金があると、そのたびに銀行からメールで通知が届きます。

「入金がありました」

依頼者から特に連絡がなければ、その通知だけで終わります。

もちろん、それで何の問題もありません。

こちらが請求書を送り、先方が振り込む。
仕事としては、それで全部終わっています。

なのですが。

なんだか、座りが悪い。

数か月、ときにはもっと長く、その方のご家族の話を聞き、通帳を見て、土地を調べ、申告書を作ってきました。

その仕事の最後が、

「入金がありました」

という銀行からのメールだけ。

これでは、どうも仕事をしまいきれません。

それで、あるときふと思いつきました。

お礼状を送ってみよう。

といっても、毎回送るわけではありません。

「振り込みました。お世話になりました」と連絡をいただけば、こちらも入金確認とお礼を返して、それで終わりです。

せっかく送るなら、少し感じのいい葉書にしたい。

派手すぎてもいけない。
地味すぎてもいけない。

相続税の仕事が終わったときに送るのに、ちょうどいいもの。

AIに相談しながら、ボタニカル柄の葉書を作りました。

そこに一言、手書きで添えます。

最初はボールペンで書いてみました。

でも、なんだか物足りない。

そこで、机の奥に眠っていた古い万年筆を取り出して、書くようになりました。

すると今度は、自分の字が気になり始めました。

どうせなら、もう少しきれいに書きたい。

まず、ペン習字のテキストを買いました。

家でやってみました。

続きませんでした。

一冊、終わりません。

それなら教室に通おうと、いくつか調べました。

そうして今は、二週間に一度、電車に乗って三駅先までペン習字を習いに通っています。

もともと横書きだったお礼状も、最近は縦書きになりました。

領収書一枚を省いて、仕事をひとつ減らしたはずでした。

領収書を素直に発行したほうが、ずっと早い。

でも、いまのところ戻す予定はありません。

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