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ぴかぴか、ぺらぺら

税理士向けの業務用品カタログというものがあります。

そこには、相続税申告書を綴じるための専用ファイルも載っています。

黒い皮革風の表紙に、金文字。
希望すれば、被相続人や相続人の名前を金箔で入れることもできます。

最高級品は、一冊8,200円から。

商品説明には、

「高額報酬に相応しい皮革風生地」

とあります。

ずいぶん正直です。

相続税の報酬は、財産額が大きくなるほど高くなる料金体系も珍しくありません。

そしてカタログには、高額報酬向けの豪華なものから、一冊168円の実用的なものまで、ずいぶん幅のあるファイルが並んでいます。

ぴかぴかから、ぺらぺらまで。

相続税申告書にも、ファーストクラスからエコノミークラスまであるらしい。

しかも、相続税では豪華版が一番人気だそうです。

考えてみれば、少しわかる気もします。

相続税申告書は、ただの税務書類ではありません。
家族にとっては、ひとつの相続が終わったあとに残る一冊でもあります。

税理士の側にも、きちんとした形で仕事を締めくくりたいという気持ちがあるのでしょう。

それだけではないのかもしれません。

多くの税理士事務所にとって、相続税申告は日常の顧問業務とは別に発生する仕事です。まとまった報酬が入れば、やはり少しうれしい。

人のご不幸をきっかけにした仕事なのに、こちらには臨時の大きな報酬が入る。

その少し居心地の悪いところも含めて、立派な一冊にしてお返ししたくなるのかもしれません。

重い表紙。金文字。金箔の名前。

高額報酬をいただくにも、少し儀式が要るようです。

税理士になる前、私は親族の相続で、相続税申告書を見たことがありました。

黒くて、厚くて、ずいぶん立派なファイルでした。

だから私は、相続税申告書とはそういうものなのだと思っていました。

税理士になってから、そうではないことを知りました。

依頼する側は、自分が受け取った一冊しか見ません。
けれど税理士の側に回ると、商品棚が全部見えます。

税理士だって商売です。

どれほど立派な理念を語っていても、どこかで小さく、ちゃりんちゃりん、と音がする。

私も税理士なので、その音とは無縁ではありません。

私の事務所では、市販の普通のファイルを使っています。

名前は金箔ではなく、テプラです。

ただし、フォントには少しこだわります。

カタログには、こんな言葉もありました。

「ファイルは事務所の顔」

そこだけは、私もそう思っています。

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