この前、「簡易な接触」という言葉について記事を書きました。
「簡易な接触」にはいくつかの方法がありますが、私にいちばん馴染みがあるのが、「相続税の申告等についての御案内」です。
相続税の仕事をしていると、お客様のところにこの紙が届くことがあります。
前の記事を書くために、私はその御案内をあらためて読み返していました。
すると今度は、「簡易な接触」とは別のところで目が止まりました。
冒頭の二文です。
税務行政につきましては、日頃から御協力をいただきありがとうございます。
そして、その次が、
また、○○様の御逝去に対し、謹んでお悔やみ申し上げます。
へえ、と思いました。
お悔やみより前に、税務行政への協力のお礼が来るんだ。
そんなに大事なんだ、税務行政への協力。
その最初の一文を見ていたら、なぜか公共トイレの貼り紙を思い出しました。
「いつもトイレをきれいにお使いいただき、ありがとうございます」
あれ、同じじゃないか。
そんなことを考えていたら、ずっと前から気になっていた二人組のことも思い出しました。
東京都主税局のイメージキャラクター、タックス・タクちゃんと、のうぜい・ノンちゃんです。
タクちゃんは1993年にデビューした古株です。
税金のプロフェッショナルで、都民の求めに応じてどこにでもいち早く駆けつけ、相談相手になります。
マントで空も飛びます。
しかも公式プロフィールによれば、
「大人、こどもを超越した存在」
です。
そんなタクちゃんに、2000年、ガールフレンドが加わりました。
名前は、のうぜい・ノンちゃん。
正確には、東京都主税局のプロフィールでは「ガールフレンド」と書かれています。この記事では、ひとまず「恋人」と呼ぶことにします。
ノンちゃんは、
「タクちゃんの良き理解者」
なのだそうです。
私は前から、こののうぜい・ノンちゃんという存在そのものがかなり気になっていました。
なぜタックスの相手がのうぜいで、しかも二人が恋人なのか。
それが長いこと、解けないままでした。
でも、あの御案内を眺めていて、ようやくその理由がわかった気がしました。
「税務行政に協力してください」と頼むのではない。
最初から、
「日頃から御協力をいただきありがとうございます」
と言う。
「税を理解してください」と頼むのでもない。
タックスの隣には最初から、「良き理解者」である、のうぜい・ノンちゃんがいる。
しかも、友達ではなく、ガールフレンドです。
理解してくれるだけでも十分うれしいのに、もう好かれている。
少なくとも、行政が描いた世界の中では。
税のキャラクターについて調べていると、公式設定とは別の読み方に出会うことがあります。
ノンちゃんを見て、
「サザエさんの花沢さんだと思っていた」
という税理士がいました。
そして、のうぜい・ノンちゃんという名前を見て、
「納税、NON?」
と読んだ人もいました。
実は、私もそう読みました。
タクちゃんのほうも、「目が怖い」「目がいっちゃってる」「禍々しい」など、なかなか大変です。
禍々しい。
そこまで言われるとは、作った側も思っていなかったかもしれません。
行政は、キャラクターを作ることができます。
名前をつけることもできます。
ガールフレンドを作ることもできます。
その相手を「良き理解者」と設定することもできます。
でも、その恋がどう読まれるかまでは、決められないようです。

