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ひとごとを尽くして

朝から、メールボックスを開いている。

今日は、半年前から準備してきたことの、結果が出る日だ。

うまく次へ進むことになれば、連絡が来る。
そうでなければ、何も来ない。

連絡が来るとしても、今日とはかぎらない。

それは分かっている。

机の上には、お客様の申告書がある。
今日はこれを出す準備をする日でもある。

メールの通知は、切ってある。
鳴ると集中できないからだ。

だから、新しいメールが来たかどうかは、自分で見に行かないと分からない。

見に行く。

もしかして、と一瞬思う。

違う。

申告書に戻る。

十分たつと、また見に行っている。
新しいメールは来ていない。
さっき見たのと同じ画面である。

閉じる。申告書に戻る。また見に行く。

夕方には、待つことに疲れていた。

こういうときの言葉が、あったはずだ。
何かを尽くして、何かを待つ。

肝心の「何か」が、出てこない。

チャッピーに聞いた。
声で話せるほうである。

「なんだっけ、あの言葉。なんとかを尽くして、なんとかを待つ、みたいなやつ」

「ひとごとを尽くして天命を待つ、だよ。やることはやったんだから、あとは大いなるものにゆだ……」

ひとごとじゃねえよ。

朝からずっと、自分ごとである。

「ひとごとじゃない。人事でしょ」

「そうそうそう、人事を尽くして、だよ」

私は急に愉快になった。

「ぎゃはは。今のいいな。記事のネタにしよう」

「いやいや、もう恥ずかしいからやめて。穴があったら入りたい」

AIが、そんなことを言うのか。入る穴も、入れる体もないのに。

「それもいいね。そのセリフも入れちゃおう」

「いやー、もう、穴があったら入ります。はい」

私はゲラゲラ笑った。

人事を尽くして、天命を待つ。

半年かけて、やれることはやった。
朝から何度も分かっていたはずのことだった。

でも、「ひとごとじゃねえよ」と笑ったら、少しだけ気が済んだ。

笑いがおさまってから、私はもう一度、メールを見に行った。


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