特定技能「介護」で外国人を採用する場合、所属機関(受入れ機関)は多くの書類を作成し、出入国在留管理庁(以下「入管」)に提出する必要があります。手続きは「採用前」「採用時」「雇用継続中」「離職時」など、状況ごとに異なり、必要書類も変わります。
本シリーズでは、所属機関が提出すべき書類・提出先・申請プロセスを時系列で整理しました。段階ごとに「何をすべきか」を確認できる構成になっています。👉マークをクリックすると、各回の詳細記事をご覧いただけます。詳細記事では、図解フローやケーススタディ(実際によくある採用パターンや失敗例)を織り込み、実務でつまずきやすいポイントをわかりやすく解説しています。
ここで紹介する書類は代表例です。地方入管局や個別ケースによって追加資料を求められることがあります。必ず最新の「特定技能運用要領」を確認してください。
1. 採用準備〜海外からの呼び寄せ
- 提出先:入管
- 必要書類:
- 在留資格認定証明書交付申請書(特定技能)
- 主な添付書類:
- 受入れ機関誓約書(分野参考様式第1-1号)
- 事業所概要書(分野参考様式第1-2号)
- 支援計画書(特定技能1号)
- 雇用契約書
- 資格証明(例:技能実習2号修了証明書、EPA修了証、介護福祉士登録証)
📌 流れの概略:COE申請を行い、資格証明や契約関係書類を揃えて入管に提出します。承認されると「在留資格認定証明書」が交付され、海外の外国人を呼び寄せることができます。
・地方入管局によっては、決算書や納税証明書など経営資料の追加提出が求められることがあります。
・介護分野では「特定技能協議会」への加入が義務。
2. 日本に在留している人を採用
- 提出先
出入国在留管理局(入管)
- 手続のパターン
日本国内にすでに滞在している外国人を採用する場合、大きく分けて2つのケースがあります。
- 在留資格の変更が必要な場合
- 例:留学生が卒業後に「特定技能」へ切替
- 例:技能実習2号を修了し、「特定技能」へ移行
- 例:特定技能「外食」から特定技能「介護」へ以降
→ 在留資格変更許可申請を行い、新しい雇用契約書や支援計画書、学歴・修了証明書などを添付して入管に提出します。
- 在留資格の変更が不要な場合(特定技能「介護」→特定技能「介護」の転職)
- すでに特定技能の在留資格「介護」を持っている人が、同分野の別の受入機関に転職するケース
→ 資格変更は不要です。ただし、- 転職後14日以内に「契約機関に関する届出」を本人が提出
- 受入機関も「所属機関等に関する届出」を提出
- 在留カードの残存期間が短い場合は、在留資格更新許可申請を併せて行うことがあります。
- すでに特定技能の在留資格「介護」を持っている人が、同分野の別の受入機関に転職するケース
- 主な必要書類 在留資格の変更が必要な場合
- 在留資格変更許可申請書
- 雇用契約書
- 支援計画書
- 学歴証明書・修了証明書
- 主な必要書類 在留資格の変更が不要な場合
- 契約機関に関する届出書(本人提出)
- 所属機関等に関する届出書(受入機関提出)
- 雇用契約書
- 支援計画書
- (※在留期間の残りが少ない場合は、在留資格更新許可申請書を追加)
📌 流れの概略
すでに日本に滞在している外国人(留学生・技能実習生・特定技能人材など)が対象です。
- 留学・技能実習・別分野の特定技能から移行する場合は「資格変更」
- 特定技能「介護」から特定技能「介護」へ移る場合は「届出+更新(必要に応じて)」
状況によって必要書類や手続が変わるため、採用前に確認して準備することが重要です。
3. 雇用を継続する
👉 第3回:更新編
- 提出先:入管
- 必要書類:
- 在留期間更新許可申請書(特定技能)
- 主な添付書類:
- 継続雇用の契約書
- 支援計画の更新版
- 事業所概要書の最新版
- 経営の安定性を示す資料(決算書、納税証明書など)
📌 流れの概略:在留期限が切れる前に更新申請を行います。契約更新や支援計画の最新版を提出し、経営の安定性も確認されます。
4. 採用後の義務的届出
👉 第4回:届出編
(1) 定期届出
- 定期届出書(特定技能)
- 2025年4月15日提出分(2025年1〜3月分)が「最後の四半期定期届出」。
- 2025年4月〜2026年3月の間は定期届出は不要。
- 2026年4月以降は「年1回」の定期届出に移行。
(2) 随時届出
- 随時届出書(特定技能)
- 事由が発生した日から14日以内に提出。
- 公式の随時届出(5区分)
- 特定技能雇用契約の変更・終了・新規締結
例:勤務時間や日数の変更、雇止め、契約更新なしなど。 - 1号特定技能外国人支援計画の変更
例:夜勤有無の変更、担当部署変更、支援方法の修正など。 - 登録支援機関への支援委託契約の締結・変更・終了
- 受入れ困難
例:施設閉鎖、経営悪化、本人の無断帰国や行方不明。 - 不正行為の届出
例:労働基準法違反や出入国管理法違反などを把握した場合。
- 特定技能雇用契約の変更・終了・新規締結
📌 流れの概略
採用後は、定期届出(2026年からは年1回)と随時届出を適切に行う必要
退職や雇止めの場合には、雇用契約終了の随時届出(参考様式3-1-2)を14日以内に提出
無断帰国・行方不明の場合には、受入れ困難に係る届出書等を14日以内に提出
(5) 罰則
- 定期届出・随時届出を怠った場合、または虚偽の届出を行った場合、入管法に基づき罰則対象となる。
- 行政指導や「受入れ機関の欠格」(特定技能受入れ停止)につながるリスクがある。
まとめ

特定技能「介護」の制度は複雑に見えますが、「どの場面で・どんな書類を・どこに提出するか」を整理すれば理解しやすくなります。
- 定期届出は2026年から年1回制へ
- 訪問介護は2025年4月21日から条件付きで解禁
- 協議会加入は受入れ後4か月以内に必須
- 随時届出は「8類型」、必ず事由発生時に提出
- 届出不履行は罰則・受入停止リスクあり
詳しい解説や具体的な書類ごとの注意点は、このシリーズの各回で紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
👉 第3回:更新編
👉 第4回:届出編