特定技能「介護」で外国人材を受け入れる際、必ず理解しておきたいのが在留期間と更新(在留期間更新)のルールです。どのくらいの期間働けるのか、更新で何を確認されるのか、在留が認められる期間の上限を迎えた後はどうすればよいのか――。これを把握せずに採用を進めると、更新トラブルや人材の早期帰国につながる危険があります。
ここでは、更新の基本から更新にまつわるトラブル、実務的な準備のスケジュールまで整理し、事業者が安心して受入れできるポイントを解説します。
在留期間のキホン
特定技能「介護」の在留期間は、1年・6か月・4か月のいずれかが個別審査で付与されます。原則は1年ですが、在留状況によっては6か月や4か月と短くなることもあります。これは、初回でも更新でも同じです。
さらに、通算で最長5年が上限と定められており、特定技能1号のままではこれを超えて在留することはできません。

必ず1年もらえるというわけじゃないんですね?



そうなんです。審査次第では、6か月とか4か月しかもらえないこともありますよ。
在留期間更新のルールと書類の勘所
ここで言う「更新」とは、入管法上の正式名称である「在留期間更新許可申請」を指します。
これは在留資格の種類を変えるのではなく、同じ在留資格(特定技能「介護」)のまま、与えられた在留期間(1年・6か月・4か月)を延長する手続きです。
更新申請の審査で見られるポイントは次の3点です。
- 雇用契約の継続
次期の契約書を添付する必要があります。労働条件や社会保険の適用が明示されていることが重要です。 - 受入機関の適正性
社会・労働保険の加入状況、分野別協議会の構成員であること、支援計画の適正な実施が確認されます。 - 本人の就労実績と適応状況
実際に介護業務に従事し、支援を受けながら生活できているかどうか。



在留資格の更新って、どのタイミングで?



満了3か月前から申請可能です。契約書と保険証明を揃え、支援計画の実施状況も整えておきましょう。
5年ルールと“次の在留資格”
特定技能「介護」は、更新を重ねても通算5年で在留は打ち止めです。
5年を超えて日本で働き続けるには、原則として介護福祉士試験に合格して在留資格「介護」へ変更するルートが現実的です。
なお、結婚や身分系の資格(例:日本人の配偶者等)、他の就労系の在留資格を取得できる場合も制度上はありますが、介護分野での長期雇用戦略としては「介護福祉士→在留資格『介護』」が王道ルートになります。



5年経ったら必ず帰国、ってわけじゃないのはいいですね。もっと長期的に働いてもらえるかもしれない。



介護福祉士に合格すれば在留資格「介護」への道が見えてきます。在留資格「介護」だと長期在留できるし、家族帯同も可能なんですよ。将来的には永住申請の可能性も開けます。
特定技能2号との違い(介護は“2号なし”)
特定技能には原則として1号と2号があります。
- 1号:在留最長5年、家族帯同不可
- 2号:在留上限なし、家族帯同可
しかし、介護分野は2号の対象外です。
特定技能「介護」には他分野の特定技能のように「2号で長期在留」というルートはありません。
制度上整備されたキャリアステップは、介護福祉士資格を取得して在留資格「介護」に移行する道です。



同じ特定技能でも他の分野だと2号で無期限に働けるのに?



介護には2号がありません。5年を超えて働いてもらいたいなら、通常は在留資格「介護」への移行を前提に設計します。
特定技能「介護」には、他分野のような「2号で長期在留」というルートが設けられていません。これは制度設計の違いによるものです。
建設や造船などの分野では、経験を積んだ人を「熟練技能者」として特定技能2号に上げ、長期就労を認める仕組みがあります。一方、介護分野はもともと国家資格である「介護福祉士」という長期就労へのはっきりしたルートが整備されているため、特定技能「介護」に2号は導入されませんでした。
つまり、介護人材のキャリアパスは「特定技能1号(通算5年)」→「介護福祉士資格取得」→「在留資格『介護』」という一本筋に整理されており、2号での長期化は想定されていないのです。
更新手続きで重要な「分野別協議会への加入を証明する書類」
特定技能「介護」の受入機関は、分野別協議会の構成員であることが必須条件です(運用要領2025/4/1)。介護分野の分野別協議会は、公益財団法人国際厚生事業団(JICWELS)が事務局を担っています。JICWELSは厚生労働省の所管の公益財団法人で、外国人介護人材の受入れ支援や情報提供を行っている団体です。
在留資格の申請や更新のときには、JICWELSが発行する分野別協議会への加入を証明する書類の提出が必ず求められます。この証明書には有効期限があるため、期限切れのまま申請すると「受入機関としての体制が整っていない」と判断されるおそれがあります。更新を通すためには、常に最新の証明を用意しておくことが大切です。
JICWELS(Japan International Corporation of Welfare Services/公益財団法人国際厚生事業団)は、外国人介護人材の受入れに関して、
- 分野別協議会の運営(介護分野)
- 外国人介護人材に関する情報提供・相談対応
- 介護福祉士国家試験の受験支援情報の提供
などを担う中核的な機関です。特定技能「介護」の協議会加入や証明発行も、JICWELSが窓口となります。



協議会の加入証明って、有効期限が切れていたらどうなるんですか?



期限切れのままでは“協議会の構成員”という必須条件を満たさない扱いになり、更新に支障が出ます。だから証明書の更新時期をカレンダーで管理して、常に有効な証明を添付できるようにしておくのが安全です。
在留期間更新にまつわる失敗例
🚫 更新不許可につながる典型な失敗例
📉 支援計画をやっていない
→ 日本語学習の機会や生活相談を怠ると、法定支援違反として更新は極めて厳しくなる。
🛡️ 社会・労働保険に未加入
→「保険料がもったいない」で外していると、即「不適正」。更新は通りません。
📄 分野別協議会に未加入/証明書の期限切れ
→ JICWELSの加入証明が切れていると「構成員ではない」と見なされ、門前払い。
⚠️ 虚偽申告や資料の食い違い
→ 出勤簿と給与台帳が合わない、契約書と実態が違うなどは「虚偽」と判断され、不許可一直線。
⏳ 現場でよくある“遅延・補正”の失敗例
- 📝 提出書類の不足・誤記
→ 入管から補正指示が来て、審査が数週間ストップ。 - ⏰ 雇用契約の更新が遅れる
→ 契約書が揃わず、そもそも申請に走り出せない。 - 📑 協議会証明の再発行が間に合わない
→ 証明待ちで提出できず、更新期限ギリギリに。 - 😟 審査の長期化による本人の生活不安
→ 在留カードが切れるかも、と不安になった本人が離職を考え始めるケースも。



書類ミスくらいなら大丈夫ですか?



致命傷にはなりませんが、補正で審査が遅れます。在留期限ギリギリだと外国人本人も不安になります。余裕のあるスケジュールで進めましょう。
更新のスケジュール
在留資格「特定技能(介護)」の更新は、在留期間の満了する日(=T)を起点に逆算して準備を進めるのが鉄則です。
- 在留カードの期限を確認
- 次期契約書の準備
- 協議会(JICWELS)加入証明の有効期限チェック
👉 入管では「満了日の3か月前」から更新申請を受け付けてくれます。
👉 実務的には 4〜5か月前から準備を始めて、3か月前には申請書類が揃う状態にしておくのが安全です。
- 社会・労働保険の加入状況を確認
- 支援計画の実施記録を整理
- 出勤簿や給与台帳と契約内容を突き合わせて整合を取る
- 申請書類一式を完成
- 不備があれば補正
- すぐに入管に提出できる状態に整える
- 入管に申請し、受付票を取得すれば審査中も在留・就労は継続可能。
- これは入管法で定められた「みなし在留資格」によるもので、満了日までに申請していれば、結果が出るまで従前の資格と同じ条件で在留できる。
まとめ
特定技能「介護」は、1年・6か月・4か月ごとの短期在留を積み重ね、基本は1年更新ですが、状況により短期付与もあり得ます。通算5年が上限で、介護分野には特定技能2号がないため、介護職として長期就労を目指すなら介護福祉士資格を取得して在留資格「介護」へ移行するのが制度上のルートです。
もっとも、配偶者ビザや永住資格を得て介護職を続ける可能性もあります。ただ、介護分野の政策的なキャリアパスは「介護福祉士→在留資格『介護』」に一本化されているため、事業所としてはこのルートを前提に支援設計するのが現実的です。
在留期間更新は単なる事務手続きではなく、受入機関の体制などをチェックする場でもあります。保険加入・協議会・支援計画の履行と記録を日頃から整えておけば、不許可リスクは大幅に減らせます。小さな補正トラブルも、事前準備と期限管理で防げます。
だからこそ、更新対応と並行して、早めに介護福祉士資格の取得支援を計画に組み込み、在留資格「介護」への移行を見据えることが、事業所と人材の双方にとって長期的な安心につながります。



在留期間の更新って、単なる延長手続きじゃなくて、“ちゃんとやってるかチェックされる場でもある”ってことですね。



そうなんです。普段から証跡を整えておけば、更新手続きもスムーズです。