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死亡日にも、朝があり、昼があり、夜がある

相続のご相談を受けると、私はまず、亡くなった日をお尋ねします。

ご家族を亡くして間もない方から、お問い合わせをいただいたときのことです。

「昨日です」

そう答えたあと、少し間を置いて、その方は言い直しました。

「あ、違いました。一昨日です」

亡くなったのは、日付が変わる少し前だったそうです。

大切な人が亡くなったばかりの人にとって、時間はまだ、午前零時を境に昨日と一昨日にきれいに分かれてはいないのかもしれません。


一方、相続の仕事では、人が亡くなった日をまず日付で見ます。

○年○月○日。

申告期限も、金融機関に依頼する残高証明書も、そこから始まります。

けれど、仕事を進めていると、その一日が少しずつ細かくなってくることもあります。

戸籍には、死亡した時刻まで書かれています。

「午後八時三十分死亡」

死亡した時刻は、場合によっては、誰が相続人になるのかにもかかわります。

「時刻不詳」という記載に出会うこともあります。

亡くなった日は分かっている。でも、その日のどこで生と死が分かれたのかは分からない。

通帳をめくっていると、死亡日と同じ日付にお金が引き出されていることがあります。たとえば、その人が午前中に亡くなり、午後に家族が十万円を引き出していたとします。

金融機関から取り寄せた「死亡日現在」の残高証明書には、その十万円が引き出されたあとの残高が記載されています。

でも、その人が亡くなった瞬間には、十万円はまだ口座にありました。

そうなると、日付だけでは足りません。

何時に亡くなったのか。お金が動いたのは、その前なのか、あとなのか。

一つの日付だったものに、時刻が入ってきます。


最初にお問い合わせをいただいたとき、私が知っているのは「○月○日」という一つの日付です。

それが、戸籍を読み、通帳をめくるうちに、二十四時間にほどけていきます。

「被相続人」と呼ばれるその人にも、その日の朝があり、昼があり、夜がありました。

その日のどこかの時点で、生者から死者になりました。

その一日が、「死亡日」として記録されます。

その人を見送った家族にも、その日の朝があり、昼があり、夜がありました。

「昨日です」

最初にそう答えた方にとって、その一日は、まだカレンダーの一つのマスには収まっていなかったのかもしれません。

私はその時間を、まず一つの日付として受け取ります。

そして相続の仕事をしているうちに、その日付の中にあった時間を、少しずつ見つけていくことがあります。

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