税理士の私が、このところ熱心に取り組んでいる研究がある。
税のキャラクター研究である。
とりわけ気になっているのが、国税庁のe-Taxキャラクター「イータ君」だ。
緑色の四角い顔に、緑色の手足。電子申告・納税システム「e-Tax」の広報キャラクターである。
そんなイータ君が、学校給食の牛乳パックにまで登場していたことを知った。
しかも、4種類ものポーズを決めて。
確定申告期は、イータ君の出番
毎年2月になると、税務署は確定申告の広報活動に忙しくなる。
2026年2月、茨城県の古河税務署の呼びかけに地元のトモヱ乳業が協力し、学校給食用の牛乳パックにイータ君が登場した。
この企画のために、お披露目式まで開催されたという。出席したのは、古河税務署の署長とトモヱ乳業の社長である。
トモヱ乳業の「ふるさと牛乳」は、普段は同社のキャラクター「トモ~くん」がパッケージを飾っている。ところが、確定申告期の約2週間、その場所にイータ君が出張ってきた。
それも、ただ立っているだけではない。
片手を頭に添えて「えへっ」と照れてみたり、片手を上げて「やったー」とでも言いたげなポーズを決めてみたり。中には、「イータ君」と書かれた名札を手にしている姿もある。
日本農業新聞によれば、茨城県、埼玉県、東京都の学校給食に、1日約21万個、約2週間にわたって供給されたという。飲料パッケージへの採用は、全国初とのことだった。
牛乳で未来を育てる
この企画には、「牛乳で未来を育てる」というキャッチコピーがつけられている。
トモヱ乳業の説明によると、牛乳が子どもたちの健やかな成長を支えること、そして、その子どもたちが将来、社会を支える一員に成長していくこと。この二つの意味が込められているという。
なるほど、壮大な話である。
子どもたちが毎日飲む牛乳のパックに、税のキャラクターを登場させる。税に興味がある子も、ない子も、約2週間、給食の時間になればイータ君と顔を合わせることになる。
もっとも、子どもたちはまだ確定申告とは縁がない。イータ君に親しみを持ったとしても、それが何かの役に立つのは、ずっと先のことだろう。
税務署がそこまで考えていたのかどうかはわからないが、ずいぶん気の長い広報活動である。
東京都のある中学校の給食記事には、確定申告の季節なので、子どもたちに税をもっと知ってもらうために牛乳のパッケージがイータ君に変わっている、と説明されていた。
さらに、校舎の入り口には、賞を受けた「税に関する標語」も掲示されているという。
学校の入り口には税の標語。給食の牛乳パックにはイータ君。
確定申告期とあって、税の広報もなかなか賑やかである。
「だれー!」
ところが、別の学校では、少し違った反応が見られた。
茨城県つくば市のある小学校では、2月13日の学校記事に「こんな牛乳見たことな~い!」という見出しがついていた。
突然現れたイータ君を見て、先生は心の中でこう叫んだという。
「だれー!」
税務署長と乳業会社の社長が揃ってお披露目式を開き、4種類ものポーズを用意して、学校給食に送り出したのである。
ところが、学校に到着してみれば、「だれー!」である。
もっとも、イータ君はもともと電子申告のキャラクターだ。確定申告に縁のない子どもたちにとっては、見知らぬ緑色の人物であっても不思議ではない。
いや、先生にだって、なじみがないのかもしれない。
私はこの「だれー!」が、すっかり気に入ってしまった。
給食室には、給食室の暦がある
イータ君牛乳は、実際に学校でどんなふうに迎えられたのだろう。
気になって、各地の学校のホームページを調べてみた。
すると、埼玉県のある中学校が、毎日の給食を写真つきで詳しく紹介していることがわかった。
2月13日。この学校でも、イータ君の牛乳パックが写真に登場していた。
熱心に紹介されていたのは、翌日のバレンタインデーにちなんだハート形のマカロニだった。
2月18日は、年に一度のおでんの日。写真には、片手を上げたイータ君が写っていた。
2月25日は、翌日の公立高校入試に向けた受験生応援のカツカレー。この日のイータ君は、頭に手を添えた「えへっ」のポーズである。
イータ君は、そんな学校の2月に、確定申告の季節を引っ提げてやってきたのだった。
私が調べた範囲では、給食日記にイータ君への言及は見つからなかった。
もう一度、2月13日の写真を眺めてみた。
そこには、イータ君の牛乳パックがある。
そして、ハート形のマカロニがある。
税務署は未来の納税者を育てようとしていた。
給食室では、ハートのマカロニを作っていた。
