以前、アメリカ人の英会話の先生に、私の仕事の話をしたことがあります。
相続を専門にしている税理士です、と話すと、その先生は言いました。
人生には、自分だけでは手に負えないことがある。
だから、専門家が必要なんだ、と。
医者。
弁護士。
そして、お金の専門家。
私はそのとき、ちょっと嬉しくなりました。
おお。
税理士、人生に必要な三人の専門家の一人なのか。
ところが、あとになって少し不安になりました。
そもそも、アメリカには日本の税理士と同じ資格制度がありません。
ということは、先生が言った「お金の専門家」は、税理士のことではない。
では、私は本当に三人目だったのでしょうか。
調べてみると、アメリカでは相続の場面で、弁護士やCPA、ファイナンシャル・アドバイザーなどが関わります。
私が日本でやっている仕事と重なるところは、たしかにあります。
まったく見当違いではなかった。
でも、「税理士だから三人目」という話でもなかった。
どうやら私は、先生の言葉を聞いて、少し早めに自分の席を確保していたようです。
ただ、三人目の席がどうも落ち着かない感じには、どこか既視感がありました。
世界三大料理です。
フランス料理。
中華料理。
そして、トルコ料理。
私は以前、トルコを旅行したとき、現地で初めて「トルコ料理は世界三大料理の一つです」と知りました。
へえ、トルコ料理なんだ。
少し意外でした。
でも調べてみると、トルコ料理がそこに入るのにも、それなりの理由があります。
オスマン帝国の広い領域から、さまざまな食材や調理法が集まり、宮廷を中心に大きな料理文化が育った。
なるほど、三大料理と言われるだけの厚みはあります。
ただ、日本で暮らしていると、その厚みはあまり見えません。
世界三大料理の三つ目。
人生に必要な専門家の三人目。
どちらも、少し意外なところに席があります。
トルコ料理は、いまもちゃんと三つ目の席に座っています。
さて。
私があの日、ちょっと嬉しくなって座った三人目の席。
あれは、本当に私の席だったのでしょうか。

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