つい最近、ご依頼いただいていた相続の仕事を終えました。
地銀にひとつ、口座が残っていました。
手続きはご家族自身ですることになり、あとで残高が800円ほどだとわかりました。
ご家族は、そのままにしておくことを決めました。
取りに行かない、と決めることで、長く続いた相続の手続きをしまうことができました。
そのとき、私は、
「ようやく、ひと区切りつきましたね」
とお話ししました。
その相続は、本当にひと区切りついたのだと思います。
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でも、相続税の申告では、そうはいかないことも多いのです。
申告が終わったあとになって、それまでわからなかったことが判明したり、新しい資料が出てきたりすることがあります。
そんなときは、終わったはずの申告書を、もう一度開くことになります。
税務調査は、申告書を出した翌年か、その次の年あたりに来ることが多いように感じます。
ただ、それは来やすい時期の話で、税務署が申告内容を見直せる期間は、原則として申告期限から5年。場合によっては、もっと長くなります。
そして相続税では、もっと昔の申告書が必要になることもあります。
あとになって別の相続が起き、前の相続の内容を確認することもあります。かなり前の相続までさかのぼって計算に使うこともあります。
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あるとき、古い相続税申告書を、ご家族に探していただきました。
「ああ、ありました」
と、ご主人が持ってきてくださった申告書は、紙が少しべたべたしていました。
表紙には、小さなゴキブリが一匹、ぺたりとくっついています。
干からびていましたが、茶色い色はしっかり残っていました。
私が「えっ」と固まると、ご主人も「あっ」と気づき、ぱっぱっと払い落としました。
その申告書は、9年前のものでした。
亡くなった奥様が、ご自分の親御さんの相続のときに受け取った申告書でした。
それを今度は、ご主人が奥様の相続のために持ってきました。
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ご家族にとって、相続税申告は、申告書を提出して納税を済ませれば、日常から遠ざかっていくものです。
でも税理士をしていると、しまわれたはずの申告書が、また出てくることがあります。
ときには、干からびたゴキブリまで連れて。
ひと区切り。
ついてません。

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