MENU

イータ君、えへっじゃないでしょう

国税庁のe-Taxが止まった、というニュースを見た。

外部からの不審な通信を検知して、緊急メンテナンスに入ったという。再開の見通しは立っていない。

ここで、イータ君を紹介しておきたい。e-Taxのキャラクターである。

国税庁のホームページに、プロフィールが載っている。生年月日は平成16年10月1日。出生地は東京都千代田区霞ヶ関。身長は約165センチ、体重はひみつ。男の子で、独身。特技は、パソコン。それから、空も飛べます。

霞ヶ関の生まれで、空も飛べる。なかなか頼もしい。

見た目は、パソコンのモニターに目と口がつき、手足が生えている。だから顔が四角い。機械に表情を与えられた男の子だ。今年の10月で22歳になった。

さて、復旧の見込みを知りたくて、e-Taxのサイトを開いた。

左上に、イータ君がいた。ロゴの横である。e-Taxのサイトは、どのページを開いても、左上にイータ君がいる。

片手を頭に添えて、にっこりしている。見覚えのあるポーズだった。学校給食の牛乳パックに載ったイータ君のことを書いたとき、私はこの姿を「えへっ」と照れている、と書いた。照れながらも、自分を売り込んでいる顔である。霞ヶ関の生まれで、空も飛べます。そんな釣り書きを差し出しながら、ちょっと照れてみせる。

その顔が、緊急のお知らせの上にいる。

えへっ、ボクどぉ?

どうじゃないのよ。申告させてちょうだい。

同じ画面の右側に、こう書いてあった。メンテナンス時間を除き、24時間ご利用可能です。

なるほど。今日は、「除き」のほうだったのだ。

紙で申告書を出していたころ、税務署から「電子申告にご協力ください」と電話がかかってきたことがある。一度ではない。三度ほどもらった。去年あたりから電子申告に切り替えたので、電話はもう来ない。私は協力したのである。相続税の申告は、資料がそろうのも、遺産分割がまとまるのも遅れがちで、期限ぎりぎりになることが珍しくない。

世間で心配されていたのは、11月10日が期限の源泉所得税の納付だった。納付もe-Taxを通して行う会社が多いから、止まると納められない。

私が心配していたのも11月10日だったが、相続税のほうである。11月10日が申告期限の案件を抱えていた。こんなこともあろうかと思って、1日に申告を済ませてあった。それでも、思った。あれがもう少しずれ込んでいたら。

紙に切り替えるなら、印刷して、確認して、郵便局の窓口に持ち込んで、その日の消印をもらわなければならない。あるいは、税務署まで出かけて、閉まる前に窓口に出す。

今回の案件は、提出先が近くの税務署だった。いざとなれば、窓口に走ればいい。けれども、私のところには、関東の外の、遠い税務署に出す案件も来る。あれがそういう案件だったら、走っても間に合わないかもしれない。

そう思うと、イータ君の笑顔が、ますます気になった。

断っておくと、国税庁がわざわざこの絵を選んだわけではない。ロゴのイータ君は、いつもそこにいる。

でも、今日はちょっと、顔を変えてほしかった。

イータ君には、困った顔もある。国税庁は、第三者にも使ってもらえるように、イータ君のイラストを242点も用意している。頭を下げているイータ君がいる。困惑しているイータ君がいる。入院しているイータ君もいる。時計を持ったイータ君もいて、その時計には針がない。復旧のめどが立たないときに、これほどぴったりの絵もない。

これだけそろっているのだから、まずはご自身で使い分けてみてはいかがだろうか。

翌日の午前、e-Taxは再開した。納税者の情報は漏えいしていない、と国税庁は発表した。メンテナンス期間中はご不便をおかけした、とのことだった。

止まっていた一日のうち、私が見たのは、ほんの一瞬である。それ以外の時間、左上のイータ君が何をしていたのかは知らない。

たぶん、ずっと、えへっとしていたのだと思う。