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北大路欣也の目

税理士会の研修に行くと、だいたい税理士がいます。

当たり前です。

ところがその日は、受付のあたりに、いつもとは少し違う人たちが混じっていました。

髪型が違います。
服装も違います。
なぜか、体つきまで違って見えます。

会計ソフトをつくるIT企業の人たちでした。

その日来ていたのは、会計ソフトの会社のなかでも新しいタイプの人たちでした。クラウドやAIを会計の仕事へ取り込もうとしている人たちです。

その日は、税理士が日々の仕事にAIをどう活用できるか、という話を聞く研修があり、そうしたIT企業から何社かの人が会場に来ていました。

「なんか、違う人種が混じってますね」

受付を手伝いながら、隣にいた税理士にそんなことを言いました。

そこはかとなく、アメリカ西海岸の匂いがします。
いつもの税理士会の研修会場なのですが。

休憩時間になると、その人たちが参加者のところを回って、名刺交換を始めました。

私のところにも一人やってきました。

「名刺交換させてください」

「あ、すみません。今日、名刺を忘れました」

その人は少し苦笑いして、そのまま次へ行きました。

私も困りませんでした。
法人顧問をしていないので、こうした会計ソフトの会社とは普段ほとんどご縁がありません。

研修のあとには、中華料理店で懇親会がありました。

私は研修部員だったので、入口に近い、運営側の先生たちが集まるテーブルにいました。
少し裏方寄りの席です。

IT企業の人たちや参加者の税理士たちは、もう少し奥のテーブルで楽しそうに話していました。

懇親会が終わりました。

みんなが椅子から立ち上がり、店の入口へ向かい始めたときです。

同じ支部の女性税理士が、通りがかった若いIT企業の人を見て、急に足を止めました。

そして、その人を呼び止めて言いました。

「北大路欣也に似てません?」

え。

私はそこで初めて、その人の顔をまじまじと見ました。

似ています。

とくに、目が似ています。

「ほんとだ。似てる。今まで言われたことないですか」

「ないです」

私たちは、こんなに似ているのに、と顔を見合わせました。

その人は三十歳くらいだったと思います。
一瞬、北大路欣也が誰なのか考えているような顔をしました。

それでも、

「そう言ってもらえるの、うれしいです」

と笑いました。

研修が始まる前、私は受付の前にいる人たちを見ていました。

髪型が違う。
服装が違う。
体つきまで違う。

帰るころには、そのうちの一人の目を見ていました。

https://mayutokuda.com/n/n2c5420219289

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