請求書を受け取ると、ときどき、こんな一文を見かけます。
「金融機関の振込金受取書を、領収証に代えさせていただきます。」
こういう運用をしているところは、けっこうあります。
銀行振込なら、振込明細や通帳に記録が残ります。請求書とあわせれば、誰に、いくら支払ったかも確認できます。
それを何度も見ているうちに、あるとき思いました。
これ、私もやればいいのでは。
それまで私は、報酬を振り込んでいただくと、領収書を作って郵送していました。
印刷して、封筒に入れて、宛名を書いて、切手を貼って、ポストへ持っていく。
地味に手間がかかります。
領収書が必要な方には発行するとして、必要でもない方にまで毎回こちらから送らなくてもよさそうです。
そこで、領収書は原則として発行せず、必要な場合にはご連絡いただくことにしました。
よし。またひとつ減らした。
*
入金があると、そのたびに銀行からメールで通知が届きます。
「入金がありました」
依頼者から特に連絡がなければ、その通知だけで終わります。
もちろん、それで何の問題もありません。
こちらが請求書を送り、先方が振り込む。
仕事としては、それで全部終わっています。
なのですが。
なんだか、座りが悪い。
数か月、ときにはもっと長く、その方のご家族の話を聞き、通帳を見て、土地を調べ、申告書を作ってきました。
その仕事の最後が、
「入金がありました」
という銀行からのメールだけ。
これでは、どうも仕事をしまいきれません。
それで、あるときふと思いつきました。
お礼状を送ってみよう。
といっても、毎回送るわけではありません。
「振り込みました。お世話になりました」と連絡をいただけば、こちらも入金確認とお礼を返して、それで終わりです。
*
せっかく送るなら、少し感じのいい葉書にしたい。
派手すぎてもいけない。
地味すぎてもいけない。
相続税の仕事が終わったときに送るのに、ちょうどいいもの。
AIに相談しながら、ボタニカル柄の葉書を作りました。
そこに一言、手書きで添えます。
最初はボールペンで書いてみました。
でも、なんだか物足りない。
そこで、机の奥に眠っていた古い万年筆を取り出して、書くようになりました。
すると今度は、自分の字が気になり始めました。
*
どうせなら、もう少しきれいに書きたい。
まず、ペン習字のテキストを買いました。
家でやってみました。
続きませんでした。
一冊、終わりません。
それなら教室に通おうと、いくつか調べました。
そうして今は、二週間に一度、電車に乗って三駅先までペン習字を習いに通っています。
もともと横書きだったお礼状も、最近は縦書きになりました。
領収書一枚を省いて、仕事をひとつ減らしたはずでした。
領収書を素直に発行したほうが、ずっと早い。
でも、いまのところ戻す予定はありません。

コメント