税理士会の定期総会は長い。
私は退屈していた。
スマホで租税教育について調べていたら、「うんこ×税」という文字が目に入った。
えっ、と思った。
調べてみると、うんこドリルと財務省のコラボレーションだった。
なんで、うんこ。
税理士の世界には、にちぜいくんというフクロウがいる。
日本税理士会連合会の公式キャラクターで、税理士の仕事や税理士会の活動を知ってもらうための広報役をしている。
丸い眼鏡に蝶ネクタイをしている。着ぐるみになると、ふわふわで、丸くて、大きい。
以前、にちぜいくんについて調べていたとき、ある税理士さんのブログを見つけた。
地元の産業祭の税理士会ブースに、にちぜいくんが現れる。すると、子どもたちが次々とやってきて、一緒に写真を撮る。
ところが、にちぜいくんが時間になって帰ってしまうと、税金クイズをしていたブースは途端に静かになった。
私はなぜかこの話が気に入って、ずっと覚えていた。
税金だけでは、人はなかなか寄ってこない。そこで、ふわふわで丸いフクロウに来てもらう。税金のいる場所に、にちぜいくんが人を連れてくる。
でも、「うんこ×税」は逆だった。
うんこのまわりには、もう子どもたちがいる。
うんこだ。うんこだ。
それだけで笑っている。
うんこドリルには、うんこ先生がいて、うんこライターがたくさんのうんこ例文を書く。子ども向けかと思えば、最近では新成人の金融教育にまで進出している。
そこには、うんこワールドができている。
うんこドリルを発行する文響社は、この「うんこワールド」を、子どもたちの学びのプラットフォームとして展開している。
なるほど、いろいろなものを載せられるのだ。
漢字も、算数も、金融も。そして税金も。
税金のほうからうんこワールドへ出かけていって、プラットフォームの上に載せてもらう。
財務省が、うんこの上に税金を載せるのである。
うんこドリルでは、「うんこと税金に共通するものは?」というような問題が出題される。
「肥料じゃ!」とうんこ先生が答える。
うんこが農作物を育てるように、税金も社会を育てる肥料のようなものなのだという。
そこから少し離れて眺めてみる。
子どもたちがいる。新成人もやってくる。うんこ先生がいる。うんこ例文が飛び交っている。そして、そこに税金までいる。
なんだか広場のようだ。
うんこ広場である。
広場の真ん中には、うんこが堂々といる。その上には税金まで載っている。
そして、みんな楽しそうだ。
考えてみれば、これは祝祭空間なのかもしれない。
普段なら、人前で何度も「うんこ、うんこ」と言ったりはしない。まして、税金について勉強するときに、うんこの話はしない。
ここでは、それがみんなの楽しみになっている。
そう思ったら、学生時代に読んだバフチンの「カーニバル」を思い出した。
カーニバルは、離れたところから眺める見世物ではない。そこにいる人はみな、その中に入っている。
そこでは、高いものと低いもの、まじめなものとふまじめなものが入り混じる。そして、みんなが笑っている。
税金は、かなり真面目なものである。
財務省は、もっと真面目そうである。
うんこは、たぶん、その反対側にいる。
ところが、うんこ広場では、その二つが並んでいる。
しかも、うんこのほうが先にいて、財務省があとからやってきた。
うんこ広場のことを考えていると、なんだか愉快な気分になってくる。
うんこ先生がいる。
だったら私も、「うんこ税理士」と名乗ってみたらどうだろう。
うんこ税理士。
口に出してみる。
ちょっといい。
税理士会の定期総会で退屈していた私は、いつの間にか、うんこ広場の中にいた。
