税理士なのに、私は一年前まで、ふるさと納税をほとんどしたことがなかった。
テレビのニュースや新聞でふるさと納税が話題になると、わが家では決まって誰かが言った。
「返礼品が欲しくて寄附するなんて、浅ましい」
何度もそんな言葉を聞いていたので、私もなんとなく手を出しにくかった。
それでも税理士として、税制はなるべく自分でも使ってみてから考えたい。それに私は、お得なことが好きだ。
そこで一年前、ふるさと納税をちゃんとやってみることにした。
ただ、いざ寄附先を選ぶとなると、やっぱり「ちゃんとした理由」が欲しかった。
最初に選んだのは北陸だった。
わが家には北陸にルーツがある。富山のチューリップを頼んだ。能登半島地震のあとは、復興を応援するつもりで能登のお米や牡蠣も選んだ。
そのうち、ますの寿司、越後ビール、ジェラート、桃。
こうして並べると、ちゃんとした理由を探していたわりには、ずいぶんおいしいものを食べている。
そして、そのうち鹿児島県志布志市のうなぎにたどり着いた。
母は以前から、鹿児島・大隅半島のうなぎが好きだった。柔らかくておいしいという。
それなら、ふるさと納税にもあるんじゃないか。
「鹿児島 うなぎ」で探して見つけたのが、志布志市のうなぎだった。
志布志市には、縁もゆかりもない。
でも、おいしそうだった。
そして、とてもお得だった。
ふるさと納税には「3割」という返礼品の目安がある。私はそんな数字をだいたい頭に置いていた。
成城石井で似たようなうなぎを見かけると、一尾2,500円くらいする。5尾なら、ざっと12,500円。それが2万円台の寄附でもらえる。
わー、お得。
700グラム以上届くので、わが家では一度では食べきれない。
最初は普通に蒲焼きで食べる。まだ残っているので、次はひつまぶしにしたり、うな茶にしたりする。
母も「おいしい」と喜ぶ。
それで、また頼む。
もう何度も頼んだ。
ただ、何度も頼んでいると、少し気になる。
このうなぎは、リピーターがとても多いらしい。
志布志市、なかなか商売上手である。
みんながこんな調子で志布志市に寄附して、大丈夫なんだろうか。
そう思いながら、また頼む。
初めて志布志市に寄附をしたとき、もうひとつ気になったものがある。
寄附金の受領証明書に記載されている住所だ。
鹿児島県志布志市志布志町志布志。
なんだこりゃ。
返礼品目当てのふるさと納税に、あまりいい顔をしていなかった母も、届いたうなぎは喜んで食べる。
「でも、おいしいからいいか」
と言う。
私も、だいたい同じ気持ちでいる。
志布志市には、今も縁もゆかりもない。
行ったこともない。
それなのに、「志布志市志布志町志布志」という文字列には、もうすっかり見覚えがある。
今年も、もう二度寄附をした。たぶん、年末までにまた寄附する。

